月狼 佐藤ルミナ インタビュー

ISAMI様の記事より転載

新型オープンフィンガーグローブ開発秘話

総合格闘技の歴史はオープンフィンガーグローブの歴史でもある。プロ修斗発足後、何度も改良を重ねてきたグローブだが、このたびイサミ製作部が佐藤ルミナや現役選手らの助言を受け、新たな製品が開発された。元修斗環太平洋ライト級王者、現役時代は数々の死闘を繰り広げ修斗のカリスマと呼ばれたルミナはどのように開発にかかわったのだろうか。

―かなり開発に時間をかけて製作されたと伺いましたが?

ルミナ 最初に話を受けてからなんだかんだで1年くらいかかりましたね。やっぱり細々した点で、何度も何度も微調整を繰り返しましたから。そのかいあってイサミさんにはすばらしいものを作っていただけたと思います。相当大変だったと思いますよ。本当にありがとうございます。

―総合格闘技を始めて一番最初にグローブを着けたときのことは覚えていますか?

ルミナ えっ、一番最初ですか? もう20年以上前にはなりますねー。たしか「これが歴代の先輩たちがプロのリングで使ってきたグローブかぁ」と興奮したのを覚えてますね。たしかに組技で使用するには使いずらかったと思いますが、当時は他のグローブを選ぶっていう選択肢もなかったですからね。使い勝手がどうとか、そこまで考えていませんでした。

―オープンフィンガーグローブは普段の練習のときから着けているものなのでしょうか?

ルミナ 現役生活の最後の2年くらいは試合前だと、オープンフィンガーグローブを着けたまま練習することが多かったかな? 昔はそれこそ打撃の練習のときはボクシンググローブを着用したり、組技の練習のときは何も着けなかったり、練習によってそのつど使い分けてやってましたね。もちろん人によって個人差があると思いますが。

オープンフィンガーグローブ

1927年に東京帝国大学の唐手研究会が剣道の籠手をベースにして製作したものがその原型といわれる。武道家でもある俳優ブルース・リーも剣道の籠手をヒントに盟友ダン・イノサントらとともに開発し、主演映画「燃えよドラゴン」(1973)の劇中に登場している。日本ではシューティング(現・修斗)の創設者佐山サトルがプロレスラー時代から改良を重ね、「打・投・極」がスムーズに行えるようにオープンフィンガーグローブを採用し、現在ではほとんどの総合格闘技で採用されている。

―拳のケガなどはどうでした?

ルミナ 僕は大きなケガはそれほどしてこなかったんですが、1回だけ指を骨折したことありますね。それがグローブのせいなのか、自分のパウンドの打ち方が悪かったのかはわかりませんが。そうだ、バリジャパ用に作った特別製で、通常のものよりちょっとだけ薄いオープンフィンガーグローブでしたね。たしかあの大会だけしか使用しなかったはずです。こすってカットしたりとかはオープンフィンガーに限らずどのグローブでもありますよ。今はカットしにくいようにふちが丸い形状になってますよね。

―今回の開発の最初のサンプルグローブでは、まずこの親指の部分が覆われていないバージョンを作ったそうですね?

ルミナ そうなんです。試作品で試しに作っていただいたんですけど、親指の部分がないと握ったときなんかにグローブと手の甲の部分に少し隙間ができて、(故意にじゃないにしろ)組技の際にそこを掴まれたりすることもあるでしょうし、結果的にボツにしました。それに打撃の面でもオープン気味のフックなんかを打つとき親指を痛めることもあるので、やっぱりグローブで覆われてるほうがいいということになり、申し訳ありませんが作り直してもらいました。

―他にルミナさんのほうから開発サイドに要求した点はありますか?

ルミナ まず組技に対応しやすいよう指が開きやすくしてほしいと伝えました。そして甲の部分なんですが、段差があると例えば脇の差し合いなんかのときに引っかかって抜けなくなったりすることもあるので、できるだけ平らにしてほしいとお願いしました。他に改良された部分でいいますと、指がそれぞれ独立タイプになったので、拳頭部のエッジの部分がなくなって組技の際にそこを掴んで剥がされたりすることもないし、試合中に指が抜けることもほぼなくなると思います。

―手首の部分はマジックテープ式なんですね。以前は紐でしたよね?

ルミナ 個人的には紐のタイプも本格派っぽくて好きなんですけどね(笑)。実際使うとなるとこっちのほうが断然使いやすいですよね、保管も楽だし。

―与えるダメージでいうとオープンフィンガーグローブと、普通のグローブとの大きな違いはあるのでしょうか?

ルミナ う―ん、それは難しいところですね。オープンフィンガーグローブだと骨折や鼻血なんかの外傷的ダメージは大きいと思います。ボクシンググローブなんかの場合は脳を揺らすような、体の内側へのダメージを与える感じでしょうか? しかしはっきりした数値で出ているわけではないのでなんともいえない部分もありますね。まだ総合格闘技自体の歴史がそこまで長いわけではないので、整備されていないことも多々あるんですよね。これからいろいろと検証されていくのだと思います。

―ではこの新型のオープンフィンガーグローブが、現時点では最良のものなのですね。

ルミナ はい。ご苦労をかけましたが、本当にいいものを作っていただきました。総合格闘技のグローブは打撃と組技の両方に対応しつつ、安全面と攻撃性を兼ね備えなければならないという矛盾性を含んだ難しい道具です。しかも拳を守りつつ、最大限のダメージを与えなければいけないですし。
これからもより素手の感覚に近い、実用的なグローブを目指してさらに改良、進化していかなければならないと思います。

アマチュア修斗について

日本修斗協会アマチュア修斗委員会の委員長としてアマ修斗を統括する佐藤ルミナに現在の、そしてこれからのアマチュア修斗について語ってもらった。

―ルミナさんから見て、最近のアマチュア修斗の盛り上がりはどうなのでしょう?

ルミナ う~ん…正直に言いますと、若干、大会への参加者が減り気味な部分がありますね。最近はアマチュア修斗以外にもたくさん選択肢が増えてきていますから、そういう影響もあるかもしれませんね。昔はそれこそ、うち(修斗)くらいしかアマの総合をやってる団体がなかったので、そうやって選択肢が増えること自体はいいことでもあるんですけどね。微妙なところです。

―アマチュア修斗委員会のほうで対策というか何か考えていることはあるのでしょうか?

ルミナ ええ。アマチュア修斗はちょっとレベルが高くて敷居が……というようなプロを目指してない人たちのために、例えばビギナークラスのような枠を作ろうかと考えています。さらにアマチュアとプロの間にもうひと枠あってもいいかなと。そうなると間口が広くなって参加しやすくなると思うんですよね。その点は柔術の大会を参考にしたいです。
柔術は体重、年齢、帯によってかなり細かくクラス分けされています。初心者から上級者までフォローされた非常に素晴らしいシステムなので、そういういい部分は柔軟にどんどん取り入れていきたいです。

―ルールもいくつか変わったんですよね?

ルミナ そうです。去年からバンデージの使用がOKになったり、試合場が以前の柔道場、レスリングマット、リングに加えてケージも認可されました。体重表記も変わりましたしね。プロでは肘打ちがありになりました。最近はプロ、アマチュア通して求心力がなくなってきている感もありますのでグローブやルール、金網導入なんかも含め、時代にあった形態を選んでいくべきだと思います。今は色んなルールや団体があっても、最終的には一つに統一していくべきですよね。僕は昔から言っていますが、総合格闘技がサッカーとか野球のように競技として、スポーツとして確立してほしいんです。例えばそれがかりに修斗じゃなかったとしても、ずっと残るものを作りたい、後世に残らなきゃ意味がないんです。もちろん僕はそれが修斗であって欲しいし、そうなるように信じているから引退した今も頑張れるんです。そのために僕ができることは何でもやりたいと思っています。

―すばらしい目標だと思います。

引退後の生活、指導、柔術への取り組み

プロとして、観客の前で満足のいくパフォーマンスを見せられなくなったとして、昨年5月に引退式を行った月狼 佐藤ルミナ。真のプロフェッショナルというものを体現してみせた数少ない総合格闘家であった。そのルミナが「修斗」引退後の生活や、本格的に取り組み始めた「柔術」について語る。

―昨年5月のプロ修斗25周年記念大会で引退セレモニーを行ったルミナさんですが、引退後はどのように過ごされていましたか?

ルミナ そうですね。引退したのは去年の5月1日でしたけど、実際最後の試合(2012年12月24日・所英男戦)はその1年半くらい前でしたから。その試合後くらいからはハードな練習もせず、自分の練習はコンデディショニングのみで後は指導がメインになっています。(ジムの時間割の中でMMAクラスを担当している。)もう追い込むこともないので、比較的のんびりやってますね。もともと練習しなかったら痩せるタイプみたいで、体重は逆に減ったくらいです。今は65キロくらいですかね?

―総合格闘技は引退しましたが、グラップリングや柔術などの組技の試合はやられるのですか?

ルミナ はい、最近は体調もずっとよくなってきて柔術を中心に練習してますので、都合があえば試合にも出ようと思ってます。自分のジムの柔術クラスにも生徒として参加してますよ。草柳先生に習っています。(ルミナのジム「roots(ルーツ)」の柔術クラスではKZファクトリー時代からの先輩に当たる草柳和宏が毎週水曜日に指導している)。ケガするようなガチガチした練習や試合はせず、無理のない範囲で楽しくやってます。

―現在青帯ということですが、柔術の大会でルミナさんが出てきたら相手は相当びっくりするというかというか、警戒するでしょうね?

ルミナ だといいんですが、どうでしょう?(笑)柔術の試合は今までに4回くらい出てますがそのうち3回は1回戦負けでしたからね。

―グラップリングや総合ではスピーディーな動きとパワフルな極めで活躍されたルミナさんですが、柔術となるとまた別物なのでしょうか?

ルミナ いやー、難しいですね(笑)。やっぱりグラップリングとはぜんぜん違いますよ。もちろん共通した部分もありますが、まったく別の競技ですね。僕はグラップリングでは、相手の足をさばいて動いて動いて攻めるっていうスタイルでやってきたので、道着のズボンを掴まれて動きを制限されるとするとやりづらくて。もうぜんぜん動けないですもん。最近は柔術的な動きにようやく慣れてきたところです。あと、青帯だと足関(節技)のヒールホールドなんかは反則ですけど、アキレスはOKですからね。そのへんの技術をもっとうまくいかせるような研究もやってます。とにかく柔術の新しい技術を覚えるのが面白くて。まったく知らないことを学んでいくって、やっぱりいいですよね。柔術という格闘技も奥が深いですよ。今は心から楽しんでやってます。
柔術はケガをすることも少なくて安全だし、生涯スポーツとしてもすばらしいと思います。ジムの柔術クラスも盛況ですもん。

―最近ではどういうきっかけでルミナさんのジム「roots」に入会される方が多いですか?

ルミナ それは人それぞれですね。ネットなんかでUFCや地下格(闘技)とかを見て興味を持った人もいますし、ダイエットや運動不足の解消の為の人もいます。キッズクラスや中学生もいますが、比較的高い年齢層の方も多いですよ。最近では僕のことを知らないで入ってくる人もいますからね。

―小田原にジムをオープンして今年で10周年だそうですね。ここは広いのはもちろん眺めもよいし、駅から近くて最高の立地ですね。

ルミナ ありがとうございます。10年はあっという間でした。ここはプロをバンバン輩出する厳しいジムではないのですが、老若男女いろんな人たちがその人なりの目的を持って格闘技や運動を楽しんでいる、僕の描いた理想の空間に近いジムになってきました。このジムが会員さんたちそれぞれの生活を豊かにするルーツ(源)となってもらえたらいいな、と思っています(笑)。

修斗グローブは公式ホームページで購入することができます。

●サイズ:S・M・L
●素材:牛革、スポンジ
●カラー:黒のみ
●原産国:日本製
●備考:修斗公式試合用

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PROFILE

1973年12月29日生まれ、神奈川県小田原市出身。高校卒業後、木口道場に入門し修斗を始める。全日本アマチュア修斗選手権で準優勝した後、1994年プロデビュー。ヒールホールドなど足関節を得意として1本勝ちを量産、高い身体能力を活かしたアグレッシブなファイトスタイルで修斗四天王の一人として絶大な人気をほこり「修斗のカリスマ」と呼ばれた。ファッション誌にもモデルとして登場し、従来の格闘家のイメージを一新。リングの内外で活躍し、日本の格闘技を牽引する活躍をみせた。2014年、20年に渡るプロ選手としての活動にピリオドを打ち、現在はアマチュア修斗委員会委員長、そして地元である小田原にて日本修斗協会公認オフィシャルジム「roots」の代表を務める。総合格闘技戦績 45戦26勝17敗2分 元修斗環太平洋ライト級王者第2、3、7回全日本コンバットレスリング選手権優勝

佐藤ルミナオフィシャルブログ「月狼日記」:http://ameblo.jp/satorumina/

修斗オフィシャルジム「roots」

2005年10月、佐藤ルミナが地元である小田原駅から徒歩1分の場所ににオープンさせた総合格闘技(修斗、柔術、MMA)ジム。
ダイエットや健康維持、そしてプロを目指す方まで幅広く会員を募集しています。
運動経験の無い方や女性の方にも格闘技を気軽に楽しんで頂けるよう、それぞれの目的や体力に合わせた指導を致します。
格闘技を始めたいけど『痛そう』『怖そう』と躊躇している方、先ずは見学・無料体験をお勧め致します。
※roots:源、源流。(植物の)根。根付かせる。(物事の)根底、根本、本質。由来、祖先、故郷。ロゴマークの三つの炎は修斗の基本理念である打投極の止まる事の無い回転を表現しています。

roots ホームページ:http://www.rootsgym.com/