3月3日 アマ修斗(一般・初級・児童)OT&OM山口大会 大会レポート
3月3日 アマ修斗(一般・初級・児童)OT&OM山口大会 大会レポート
[大会名]SHOOTO CHALLENGE YAMAGUCHI 06
[主 催]毛利道場
[認 定]JSA(グラップリングを除く)
[後 援]yab 山口朝日放送、KRY 山口放送、tys テレビ山口、株式会社シティーケーブル周南
[協 力]ONE Championship、(有)オフィスK
[日 時]2019年3月3日(日)
ここ数年、4月に開催していたアマチュア修斗・山口大会。
今年は2月に高松大会、4月に熊本大会が開催されることを考慮して、3月3日のひな祭りの日に開催しました。
全15試合とやや少ない試合数だったのですが、直前になって佐藤ルミナ・アマチュア委員会委員長、
そしてONE Championshipジャパンの秦社長が来賓としてお越しになることが決まり、
いつも以上に気が引き締まる大会になりました。
今回試合が成立したカテゴリーは、キッズ修斗、アマチュア修斗・新人戦ワンマッチ、アマチュア修斗・オープントーナメント、一心杯グラップリングトーナメントです。
実際にはジュニア修斗にも中学生4人の応募があったのですが、残念ながら対戦相手の応募がなく、試合を組むことができなかったのが残念でなりません。
中学生になると部活が始まります。勉強や部活との兼ね合いがあり、
修斗を続けられるのか、難しい部分がありますね・・・。
さて、キッズ修斗ではキッズ6・48kg以下のカテゴリーに3人が出場しました。
金井 琥珀選手(山口/毛利道場)と中川 昊寿選手(福岡/総合格闘技 武湧会)との試合は、
中川選手が回転の速い打撃で圧力をかけました。組んではテイクダウンに成功し、
グラウンドでも安定したポジショニングを見せて、腕ひしぎ十字固めで中川選手が一本勝ちしました。
次戦にも期待が寄せられましたが、2試合目の中川 爽選手(山口/有永道場 Team Resolve)との対戦では、
昊寿選手が開始早々にキッズ修斗では反則のハイキックを放ってしまい、反則失格という残念な結果に終わりました。
キッズ6・48kg以下の3試合目では金井選手と爽選手が対戦し、組み付いた爽選手がグラウンドの展開を狙うものの、
ポジショニングで上回った金井選手が3-0で判定勝ちを収めました。
キッズ修斗では、キッズ3・32kg以下の試合も組まれました。
経験に勝る松嶋 晃希選手(広島/TKエスペランサ)がマウント、バック、再びマウントと圧倒し、江村 神輝選手(山口/毛利道場)から腕ひしぎ十字固めで一本勝ちを奪いました。
実は、敗れた神輝選手は、現在は山口県在住の元・女子プロレスラーの大向美智子さんの長男で、試合中の大向さんの熱い応援と試合後の神輝選手の悔し泣きの声に会場は少し微笑ましい雰囲気になっていました。
アマチュア修斗・新人戦ワンマッチ部門では、第5試合で勝野 遼選手(山口/有永道場 Team Resolve)と丹野 優平選手(山口/毛利道場)がライト級で対戦。
1Rはジャッジの採点も3者3様の互角の展開でしたが、2Rになると勝野選手の打撃が的確に当たり始めました。丹野選手が慌てたところに勝野選手がラッシュを仕掛け、最後は右ストレートで顎を打ち抜いて勝野選手がKO勝ちしました。
第8試合の廣中 直文選手(山口/毛利道場)と山田 卓司選手(福岡/赤崎道場 A-SPIRIT)のフェザー級の対戦では、1R、2Rとも優勢に進めた山田選手が腕ひしぎ十字固めでフィニッシュしました。
アマチュア修斗・オープントーナメント部門は、フライ級、バンタム級、フェザー級、ライト級での実施となりました。
ワンマッチ決勝となったフェザー級では、2Rの中盤まで平野 周選手(福岡/赤崎道場 A-SPIRIT)がグラウンドのポジショニングで藤田 哲郎選手(山口/チームプラン)を圧倒していました。しかし、藤田選手は1Rの途中でも狙っていた下からのチキンウィングアームロックのクラッチを2Rの終盤に取ると一気にスイープ。そして、そのままクラッチを解かずにサイドからのチキンウィングアームロック! 逆転の一本勝ちでした。
ライト級は、プロキック戦績も持つ上村 仁選手(山口/チームプラン)を寝技で封じ込んだ上田 智大選手(島根/PUREBRED鳥取)が1回戦を突破しました。
決勝は、藤崎 陽平選手(山口/有永道場 Team Resolve)と上田選手との対戦。
藤崎選手は組み付いてグラウンドで良いポジションを奪う作戦でしたが、上田選手が1R、2Rを通じてバランス良くトップをキープし続け、判定勝ちで上田選手が優勝を掴みました。
フライ級は、1回戦を綾田 淳平選手(香川/トイカツ道場 香川支部)相手に競り勝った白石 知之選手(山口/有永道場 Team Resolve)が決勝に進み、これまで3勝1敗の戦績を築いている横関 陽登(広島/TKエスペランサ)との対戦になりました。
横関選手は17歳、対する白石選手は34歳と、倍の年齢の対決です。
1R、2Rともに白石選手が組み付いても横関選手は投げから袈裟固めで優位な展開を作りました。白石選手が上を取り返して反撃する場面はあったものの、決定的な場面を作るまでには至らず、判定2-0で横関選手の優勝となりました。
バンタム級のオープントーナメントに、これまでGRACHANというプロのリングで活躍してきた植木 新選手(東京/総合格闘技 宇留野道場)が参戦したのは、今大会の話題だったことでしょう。
1回戦、植木選手は中村 将大選手(山口/毛利道場)と対戦し、中村選手の変則的な打撃を何発か被弾したものの、落ち着いてジャブやフックを当て、巧みなテイクダウンからセコンドの指示通りに腕ひしぎ十字固めを極めました。
ルミナ委員長からのリクエストもあり、ここで少し個人的な記憶を記してみます。
10年近く前、毛利道場に、東京の大学と格闘技ジムに通っているという山口県出身の大学生が出稽古に来ました。
彼は小柄で細くて、相手をした僕は内心、“この子は格闘技を続けていけるのかな…?”と心配していました。
それから数年後の或る夜、山口県出身でプロのリングに上がっている選手が毛利道場に出稽古に来ているとの連絡がありました。慢性的に仕事の帰りが遅い僕は練習の終盤に参加して、その選手の相手を1Rだけ務めました。僕の動きを警戒しているのが感じ取れて、クレバーな選手だと思いました。
初対面だと考えて挨拶したのですが、実は数年前の小柄で細い大学生と同一人物だったと知り、僕は本当に驚きました。
それが植木選手だったのです。
その後のプロMMA興行での活躍は知られている通りですが、そんな彼が昨年12月に、
「今度のアマチュア修斗・山口大会はいつですか?出たいと考えています」
と連絡をくれた時には驚愕するとともに、深い感銘と尊敬の念を抱きました。
言うまでもなく、プロのリングに上がってきた選手が他団体のアマチュア部門に出場するのは、
それまでのキャリアを無にしてしまう可能性があります。
普通、躊躇するはずです。
それにもかかわらず、アマチュア修斗にチャレンジするという姿勢に頭が下がりました。
今大会で全出場者の中から最初に申込書が届いたのは、植木選手からでした。
それだけに、植木選手の実力に相応しい選手たちが多く参戦して欲しいと願っていました。
そんな植木選手と山口オープントーナメントのバンタム級決勝で対戦したのが、
まだ高校2年生の水田 大智選手(山口/有永道場 Team Resolve)です。
水田選手は、中学生の時にアマチュア修斗・山口大会のジュニア修斗部門に出場してくれました。
高校に進学後は、一般のアマチュア修斗部門に参戦しています。
幼い頃から空手を修練してきたので、当然打撃は鋭いのですが、寝技への対処に苦戦している印象があります。
その苦労は、師匠である宮崎清孝プロもアマ時代に味わってきたものです。
ただ、水田選手の骨格や筋量は少年から青年へと成長し、組み技の技量も向上しているのが見て取れました。
昨年は全日本アマチュア修斗選手権への出場も果たしました。
しかし、水田選手が着実に成長してきているとはいえ、さすがに植木選手が相手だと厳しいのではないか?
というのが僕の正直な予想でした。
それは、他の多くの皆さんの予想でもあったことでしょう。
ところが、バンタム級決勝戦の試合開始とともにその予想を覆したのは、他ならぬ水田選手自身でした。
1回戦と同様、植木選手は慎重な立ち上がりから試合に入ろうとしていたように見受けられました。
そこに、水田選手は猛然と右ローキック、そして左右のハイキックの連打を浴びせていったのです。
左のハイキックは的確に植木選手の顔面を捉えました。
ただ、植木選手には豊富な試合経験があります。組み付いてリカバーし、テイクダウンして上を取りました。
かつての水田選手ならそこからエスケープするのに苦労したでしょう。しかし、この場面の水田選手はヒールフックでプレッシャーをかけ、植木選手が嫌がったのに合わせて立ち上がりました。
スタンドに戻ると、水田選手は飛び膝蹴り! 更にパンチを振るったのですが、その脇をくぐって今度は植木選手がテイクダウンを狙い、水田選手はフロントスリーパーホールドで対応しました。
水田選手がフロントスリーパーホールドからスイープをしたと思えば、植木選手は体を入れ替えて再び上を狙います。
その高度な攻防に、会場からは「おお…」という感嘆の声が漏れていました。
スタンドに戻って、植木選手が外掛けでテイクダウンを奪うものの、攻め切れず、
水田選手が立ち上がって打撃を狙う、という展開で1Rは終了しました。
2R、水田選手の大振りのパンチの打ち終わりに合わせて植木選手がテイクダウン。
水田選手が立ち上がり際にタックルに来るのを誘っていたか、植木選手はガブりからバックに回り、
スリーパーホールドの体勢へ。片手でも極まりかねない、水田選手にとっては絶体絶命の状況が続きました。
しかし、水田選手は何とか腰を切って脱出。スタンドに戻って、飛び膝とパンチが交錯する中、2Rが終了しました。
2Rを終えての採点は、1Rはジャッジ3者とも10-9で水田選手を支持。2Rは3者とも9-10で植木選手を支持。
0-0のドローという判定でした。
1分間のインターバルを経て、試合は2分間の延長ラウンドに突入です。
延長ラウンドの立ち上がり、2Rのスリーパーで攻め疲れたのか、植木選手には少し消耗が見られる気がしました。
水田選手のパンチと飛び膝のプレッシャーにやや押されたように植木選手が片足タックルで組み付きます。
しかし、水田選手は倒されずに、くるりと回転して植木選手のバックに回りました。
水田選手の腕は植木選手の首に巻きついていますが、水田選手は植木選手の左側に添い寝するような体勢でした。
水田選手の足は植木選手の鼠蹊部に入っていません。
“このままだと極まらないかも…”と思っていたところ、
水田選手は左足を植木選手の右側にステップオーバーして締め続けました。
その直後、植木選手が諦めたようにタップをしました。水田選手の劇的な一本勝ちです!
会場から大きな拍手と歓声が沸き起こりました。
飛び上がって師匠の宮崎プロに抱きつく水田選手と、仰向けのままグローブで顔を覆う植木選手。
改めて、勝負の厳しさと尊さを感じさせる光景でした。
当然のようにこの試合が今大会のベストバウトであり、
水田選手にはアマチュア修斗部門のMVP賞(副賞は修斗グローブ)が与えられました。
今大会ではアマチュア修斗の他にも、闘裸男寝試合ルールを使った一心杯グラップリングトーナメントも実施されました。
ライトヘビー級では、一心杯グラップリングトーナメントの常連である石村 勝紀選手(山口/グラドー会館)が三角クラッチからの腕ひしぎ十字固めへの変化で石村 俊夫選手(福岡/MMA Rangers Gym)を降し、四十代の同姓対決を制しました。
フェザー級では2015年の全日本アマ修斗の覇者である岡本 瞬選手(福岡/MMA Rangers Gym)と、昨年の全日本アマ修斗の覇者であり、格闘代理戦争でも名を挙げた野尻 定由選手(福岡/赤崎道場 A-SPIRIT)が対戦しました。
練習する間柄でもあるという2人の試合は、一般のお客さんにどのくらい伝わったかはわかりませんが、緊張感があり、少なくとも僕にとっては非常に面白い試合でした。
結果は、トップポイントを岡本選手に先取された野尻選手が終盤にトップ、ハーフ、サイドを奪い返し、ポイント1-3で野尻選手が勝利しました。
野尻選手には3月24日のプロ修斗デビュー戦への弾みとして欲しいですね。
そしてまた、かつてアマ修斗・山口大会に出場してくれた岡本選手、野尻選手がこうしてまた山口大会に花を添えてくれたことに、とても感謝しています。
今回の大会では試合数はあまり多くなかったものの、闘志のこもった試合が多かったように思います。
2008年以来、これまでこつこつと山口県でアマチュア修斗を開催してきました。
最初は選手募集や大会パンフ作成等、修斗協会におんぶに抱っこのように助けてもらっていたのですが、自分たちでマネージメントする部分が増えて、不手際な点はまだまだ多いものの、他のジムの皆さんの知恵やお力もお借りして何とか開催を続けることができています。
地方のジムが協力して大会を運営している様子を、佐藤ルミナ委員長のみならず、ONE Championshipジャパンの秦社長にも見ていただけたのは幸いでした。
5月の選手権からアマチュア修斗のルールが変更され、ボディへのパウンドが解禁されます。選手たちがその対応に迫られるのと同様、我々裏方を務める者も更に勉強しなければと気が引き締まります。
そしてまた、選手たちから“もう一度出たいなあ”と思ってもらえるような大会を目指して、今後も山口県でアマチュア修斗を開催していきたいと考えています。
ありがとうございました。
毛利道場 村井 “Q太郎” 貴史